エアコンは、「空気」という目に見えないものにアプローチする商品です。
そのため、ダイキンのデザイン部門は「目に見えないもの」をデザインするという
非常に難しい課題に常に挑戦し続けなければなりません。
そういった特殊な背景から、
ダイキンのデザイン部門には「見えない空気を愛されるものにする」という理念があります。
「risora」デザイン開発にあたり、デザイン部門がその理念を実現するためにこだわったのは、
暮らしの中に溶け込みつつも、きちんとエアコンとしてそこに存在するデザインでした。
なぜなら、そうすることで初めて、エアコンから提供される見えない空気に愛おしさや、
心地よさを感じてもらうことができるからです。
デザインを開発するにあたってまず、部屋の高い位置に掛けられるエアコンは、
どんな形で、どんな存在であるべきかについて徹底的に調査・検討を重ね、
塊(かたまり)感のない“軽やかさ”が重要であることを導き出しました。
当時を振り返り、デザイン部門の中森大樹は次のように話します。
「その結論をもとに、家具などに見られるフレーム状のパーツ構成を採用し、
室内機全体を覆い尽くすのではなく、素材の異なるパーツを組み合わせ、
薄く見えるように工夫しました。
また、前面パネルの形状についても、きっちりと端まで延ばすことなく、
あえて側面との隙間をつくることによって、
前面パネルと本体との質感の差を和らげるデザインにしました。」
こだわりのデザイン開発はこうして進んでいったのです。
試行錯誤を重ねて生まれた「risora」の基本デザインですが、
社内的には、曲線や気流のイメージを取り入れた派手なデザインを期待する向きもあって、
当初は賛否両論でした。
デザイン部門のリーダー、関は当時を次のように振り返ります。
「今となっては笑い話ですが、“地味”や“おもしろくない”、“ただの箱”との声もありました。
エアコンそのものを派手にすることや、形を変えて目立たせるということは
それほど難しいことではありません。
しかし、それでは私たちの目指す“暮らしの中に溶け込むエアコン”にはなりません。
このデザイン案は、私たちが試行錯誤の末に、
大多数のお部屋が壁や床や天井等がすべて直線で構成されていることに気づき、
ようやくたどり着いたデザイン案でした。
そうした確信もあり、
私たちはブレることなく、私たちの目指す理想のデザインに向かって愚直に進んでいきました」
さらに、関は続けます。
「risoraのデザインは、室内機そのものの美しさだけではなく、
空間と出会うことによって完成する“途上のデザイン”を目指しています。
例えば、フレーム状のパーツ構成や、パネルの部分には敢えて「間」をデザインしました。
我々はこれを「空気の余白」と呼んでいます。
この空間を設けることで、部屋に置かれた時に初めてデザインが完成し、
空間と調和することができるのです。」
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