ダイキンのフラッグシップモデル「うるさら7」は発売以来販売台数を順調に伸ばしてきました。
すぐれた省エネ性と独自の高機能が、
多くのお客さまからご支持をいただけたのだという手応えを感じていました。
しかし、その一方で課題もありました。
日本の住宅事情に合わせつつ省エネ性を向上させるためには、室内機はどんどん前にせり出し、大きくならざるを得なかったのです。
※日本の住宅には「半間幅(約80センチ)に設置」という制約があるため、
省エネ性を向上するには限られた幅に出来るだけ大きな熱交換器を入れることが求められる。
エアコンはこのままでよいのだろうか?社内には室内機の大型化に疑問をもつ人間がいました。
2015年6月、空調営業本部長に就任した舩田聡もその一人でした。
「省エネ競争によってどんどん大型化し、住空間を圧迫する結果となっている日本のエアコン。
その進化の方向を見直す時期だと感じました。
さらに、現在、上級機種の好調の陰で苦戦がつづく中級機種の起死回生の糸口は、
室内機の小型化にあると考えました。
とことん薄く、小さくすることでエアコンの新しい価値をお客さまに提案できる。
暮らしに踏み込んで、日本の住まいにふさわしい、
より大きな満足を提供できると確信しました」
舩田は意を決して大号令をかけました。
「とにかく、とことん薄くて小さい室内機を作ろう!」
これまでの戦略から大きく舵を切り、日本の住空間に調和する
コンパクトなエアコン「risora」の開発プロジェクトが動き出しました。
プロジェクトメンバーとして開発の中心的役割を担った開発リーダーの岡本高宏は、
「うるさら7」に搭載されている気流技術「サーキュレーション気流」の生みの親であり、
これまで、さまざまな技術開発に携わり、すぐれた製品を数多く世に送り出してきました。
しかし、岡本は、お客様は本当に満足しておられるのだろうか、という疑問を感じていたのです。
「お客さまは、省エネ性や機能性や価格を見比べ、
いわゆる松竹梅という選択肢の中から選ばれています。
機能や値段だけで選ぶのではなく、もっと別の基準があってもいいんじゃないか。
このエアコンがわが家にピッタリ!、と選んでいただけるような
新しい魅力を見つけることが新たな課題だと考えていました」
そんな岡本の心に、舩田の大号令は大きく響きました。
自分がチャレンジしようとしていた課題と舩田の言葉が合致し、明確な目標が提示されたのです。
「薄く、小さいことこそが新しい基準なのだ」
岡本の気持ちは一気に昂ぶります。
「舩田本部長の言葉を聞いた時、
これまで開発してきた機能をコンパクトな室内機に詰め込むことは
途方もない挑戦であることは容易に想像できました。
しかし、ダイキンの技術のすべてをかけ、薄く、小さく、高機能なエアコンを作ることこそが、
お客さまのエアコン選びの新しい基準を創造することなのだと
大きなモチベーションが生まれました」
デザイン部門のリーダーには関康一郎が就きました。
関は、国内のみならず海外の空調デザインも手がけてきた経験を持ち、
舩田や岡本と同様に大型化をつづける日本のエアコンに違和感を持っていました。
海外、とくに欧米では機能面だけでなく、
デザイン性がエアコン選びのひとつの基準となっています。
しかし日本では、初めに機能や仕様が決まり、
それに合わせたデザインを考えるというプロセスがこれまでの主流でした。
「まずは発想を転換し、日本の住空間にふさわしいエアコンのあり方や
お客さまが求めている理想の住まいやライフスタイルに応えるデザインを
ゼロからもう一度考えること。
そのようなこれまでと違うプロセスを通じて
次世代のスタンダードとなるエアコンが私たちの手によって生まれると思いました」
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