おうち時間が増える傾向にある今、部屋のインテリアを変えてみたいと思っている人は多いはず。ただ、家具やファブリックなら気軽に変えられても、壁や床を変えるとなると「大がかりで大変そう」「専門業者に依頼しないとできないだろうな…」と思っている人が多いのではないでしょうか。
ところが、少しの知識と道具があれば、いますぐに取り組めることもあるのです。
空間デザイナーとして活動し、セルフリノベーションに関する著作も多数持つ「夏水組」の坂田夏水さんに、最近のセルフリノベーションのトレンドや、コーディネートのポイントについて教えてもらいました。
一人でも、賃貸でも、セルフリノベーションはできる
▲輸入壁紙をはじめ、さまざまなDIYマテリアルやインテリアアイテムが並ぶ「Decor Interior
Tokyo」内。まるで宝物探しのように楽しめる。
空間デザイン会社「夏水組」として活動しながら、インテリアショップ「Decor Interior Tokyo」の運営も手がける坂田さん。ショップではペンキや壁紙、床材などのDIY資材を多く扱い、自分で壁や床をアレンジしたい人たちが繰り返し訪れる、セルフリノベーションの強い味方です。
壁紙の上から塗れるペンキや、色や柄が豊富な輸入壁紙、ニトムズと共同開発したインテリアマスキングテープ、好きなところに棚をつけられるブラケットなど、インテリアを自分好みに変えるためのマテリアルを目にすれば、「自分だったらどうする?」と、いろいろな想像がどんどん膨らみます。
「セルフリノベーションは『塗る・貼る・つける・飾る』の4つの要素でできると考えています。お店に置いている商材も、その4要素にもとづいてセレクトしていて、夏水組でプロデュースしているものもあります。その代表格が“塗る”マテリアル、30色のオリジナルペイントです」
▲30色のカラーバリエーションがあるオリジナルペイントは壁紙の上からも塗れるDIY向きの水性ペンキ。塗りたい面積に応じて、缶のサイズをアドバイスしてくれる。
夏水組ペイントのオリジナルカラー30色は、フランスのパリの街並みにインスパイアされた、絶妙なニュアンスをもつ“くすみカラー”。フランスをはじめとするヨーロッパや海外のインテリアに憧れを持つ女性たちに人気です。
「パリの街にあるお店の外壁やドアなどに見られるカラーをオリジナルでつくりました。色の名前も、くすんだ青緑を『ヴェール・ドゥ・グリー』、夜の海の色のような暗いブルーを『メルドゥニュイ』など、パリの街並みやカルチャーからとって付けています。
日本ではペンキというと原色に近い色で、ホームセンターに積まれているイメージがあるかもしれません。でもお部屋の中では原色のように主張の強い色は選びにくかったりもします。ちょっとトーンを抑えてグレーがかったくすみカラーなら、合わせやすいです」
とはいえ「ペンキ塗り」に慣れていない初心者なら、「失敗せずにちゃんと塗れるのだろうか?」と、きっと心配に思うはず。しかし坂田さんいわく「誰でも必ず、きれいに塗れますよ」とのこと。専用のローラーを使い、余計な部分にペンキがつかないようにしっかり養生さえしておけば、驚くほど見違えた部屋が手に入るのです。半日ほどあれば、部屋の壁の一面を2度塗りすることが可能だと言います。
続いて、“貼る”の代表格でもある壁紙。実は賃貸物件でも貼ることが可能です。
「はがせる糊を使えば、原状回復できます。もとの壁の上に糊を塗って、その上からお好みの壁紙を貼ります。引っ越すときには後から貼った壁紙をはがせば、下からきれいな状態の元の壁紙が出てきます」
面積の小さなトイレの壁などには、思い切った柄を選ぶ人も多いそう。また、全面に同じ柄を貼るのではなく、腰の高さで上下に組み合わせたり、一部分だけをアクセントクロスとして貼ったりなど、楽しみ方の幅も広いのだとか。
壁紙で人気のものは、クラシックな柄のウィリアム・モリスや、ゴッホの名画シリーズ。
▲「壁紙貼りはやればやるほど上手になるので、どんどんスピードも上がっていきますよ」と坂田さん。打ち合わせスペースの壁に貼っているのはウィリアム・モリスの「ピンパネール」壁紙。
「ウィリアム・モリスは、日本でいえば幕末期から明治初期にかけて活躍したイギリスのデザイナーです。その時代にこんなモダンなデザインが生まれていたことも素晴らしいですし、それが150年以上の時を経て、今もなお受け継がれているのもすごいことだと思います。伝統的な重ね刷りの技法で作られているので、触ると立体感も感じられます」
壁紙貼りに必要な道具もショップで取り扱うほか、施工手順の動画なども提供しているので、初心者でも安心です。
「最初は『自分で貼れるんですか?』とおっしゃっていた方も、一度やってみると想像以上にきれいにできて、お部屋の雰囲気が一変するので、夢中になってしまう方が多いです(笑)。次のご来店のときには『この壁をこうしたい、あの壁をああしたい』といろいろ希望をもって来店されます。
フランスやイギリス、アメリカなどは、ライフステージによって壁や床を含むインテリアを変えることはよくあることです。子供の成長に合わせて、家族みんなで子供部屋の壁を塗り替えたりすることも普通です。フランス人は季節ごとにカーテンを変えたりしますよね。
最近は、日本の業界全体で『もっと住まいを自由に楽しめるように』という流れが出てきています。よりたくさんの人たちが、ファッションを楽しむようにインテリアも楽しめたらいいですよね」
迷いから抜け出すポイントは、自分の身の回りにある
▲「インテリアや内装のお仕事では、必ずお客様の服装や持ち物に目を配ります」と坂田さん。
いざセルフリノベーションに挑戦! と思っても、「色や絵柄がたくさんありすぎて選べないかも…」と不安になる人がいるかもしれません。しかし、数々のリノベーションやインテリアコーディネートを手がけてきた坂田さんは「お洋服を選ぶのと同じイメージを持てば取り組みやすいです」と言います。
「お洋服を買おうと思ってデパートへ行くと、まずはブランドを選び、新作なのか定番商品なのか、どんなときに着たい服なのかを選んで、その中で自分の好きな色や柄を見つける、というようにだんだん絞り込んでいきますよね。
インテリアもそれを同じで、まずは資材をよく見て、自分の好みの方向性を見つけて、気になったものをより深く掘り下げていけばいいんです」
自分の好みがよくわからない、という人は、まず自分の着ているものや持っているもの、メイクやネイルなどを見直してみるといいそう。
「人間の好みというものは、自然と服やアクセサリー、メイク、持ち物などにあらわれています。ネイルがキラキラしている人は、だいたいシャンデリアや、キラキラ系の壁紙を選んだりする傾向にあります。
逆にリネンの服に、シンプルな革素材のバッグを持っている方はインテリアもナチュラル素材を使ったり、アースカラーの色味を選んだりすることが多いです。
それから、クラシックなものが好きか。モダンなものが好きか。そのふたつは皆さん明確に分かれるはずです」
壁紙が決まれば、それに合わせてペンキや床材、タイル、デコレーションテープ、家具などとコーディネートを考えていきます。
▲壁紙とペンキを組み合わせる場合には、壁紙にある色を拾ったり、反対色をあえて持ってきたりなど、ファッションコーディネートのように考えていくとスムーズ。
組み合わせを考えるときも、ファッションコーディネートと同じ考え方でOK。人気が高いのはブルー系やグリーン系。少しグレイッシュなくすみカラーがベースにあると、さまざまなものに合わせやすいと坂田さんは言います。
「『クラシックなコーディネートならこう』『北欧モダンだったらこう』という、インテリアのテイストごとのセオリーはあるものの、セオリー通りにしないとまとまらない、というわけではありません。
ひとつポイントを挙げるなら、空間全体を同じ色や柄で統一するというより、どこかにコントラストをつけたり、抜ける箇所をつくることが大事です。
それに新築かモデルハウスでもない限り、家具も含めてトータルコーディネートするケースはありません。大抵の場合は、手持ちの家具や家電に合わせることになりますので、大きな家具などはスマホで写真を撮っておいてコーディネートを考えることもおすすめです」
risoraなら、個性的な輸入壁紙にもぴったり合わせられる
▲risoraのパネルカラーの色見本帳を持ち、壁紙とのコーディネートを考える坂田さん。
リノベーションや店舗・ホテルなどの内装を手がける坂田さんにとって、壁と切り離せないのがエアコンの存在。
「飲食店やホテルでは、壁紙が白ではないことも多くあります。ダークトーンの壁紙や、絵柄のある輸入壁紙を貼ったところに、いわゆる普通の白いエアコンがつくと、空間全体が台無しになってしまうことはよくあります。
最近手がけた物件では、落ち着いた色味の壁紙を選んだので、それに合わせて“色のついたエアコン”というキーワードで探してrisoraを見つけ、指定して設置していただいたんです」
risora Custom Styleのカラーバリエーションなら、壁の色から浮くことなくコーディネートができる、と坂田さん。試しに夏水組オリジナルペイントの色と見比べてみても、似ている色をいくつも見つけることができました。
「パリの街にある深くて品のある青<ブルードュパリ>は、risoraのディープターコイズやデニムに近いですね。暖色系なら、タンポポの色からとったオレンジと黄色の中間色<ダンデリオン>と、risoraのマスタードが似ています。重厚なワインの色を表す深みのある暗い赤<リードュヴァン>と、risoraのプラムもとても近い色です。
DIYをされる方はエアコンのパネルにインテリアマスキングテープを貼ったり、ペンキで塗ったりする方もいらっしゃるのですが、家電製品なのでやはり保証の問題も出てきます。最初から色がついているものを選べるなら、その方がいいと思います」
▲左はrisora Custom
Styleのパネルカラー色見本帳。右は夏水組セレクションのペンキカラー見本帳。ぴったり合うカラーが探せそう。
さらにrisoraは、個性的な色や柄の多い輸入壁紙にもコーディネートしやすいカラーラインナップを揃えています。そこで坂田さんに、risora Custom Styleのパネルカラーと壁紙とのコーディネートを考えてもらいました。
【マリメッコ ピエニウニッコ レッド×ガーネット】
まず選んだのは、フィンランドのテキスタイルブランド、マリメッコの壁紙。女性を中心に根強い人気があるそう。マリメッコの代名詞ともいえるウニッコ柄は鮮やかな赤が特徴です。この赤にぴったりなのが、risora Custum Styleのガーネット。深みがあり、落ち着いた大人の雰囲気のある色合いです。
「ガーネットなら、ウニッコ柄の赤にぴったり合わせられますね。マリメッコの壁紙は、壁一面でなくても、インテリアパネルにして、一部分にアートのように飾るのもおすすめです。
赤はちょっと主張が強いかもと思われる方は、同じウニッコ柄でブルー系やグレー系など、ほかの色味のものもあるので、そちらも検討してみてください」
【MORRIS & Co. BLACKTHORN×モスグリーン】
ウィリアム・モリスの代表的なデザイン「ブラックソーン」。イギリスの花・ブラックソーンをはじめとする、モリスが愛した花々が描かれています。
この壁紙に合わせるrisoraは、モスグリーン。壁紙から浮くことなく、インテリアのトータルコーディネートを可能にします。
「モスグリーンは『ブラックソーン』のベースの色味であるディープなグリーンにぴったりです。この絵柄は色が複数使われているので『絵柄のどの部分にrisoraを置くか?』を考えるのも楽しいですね」
【Van Gogh Museum×ディープターコイズ】
ゴッホの名画をリフレインパターンにした壁紙シリーズ。さわやかなスカイブルーをバックに、咲き誇る花を描いた「花咲くアーモンドの木の枝』。日本の浮世絵の影響が見られるといわれ、日本的なシンプルモダンなデザインのアイテムとも相性がいい壁紙です。
さわやかなブルーに合わせるrisoraはディープターコイズ。
「壁紙のブルーと全く同じ色というわけではないですが、ディープターコイズなら、ゴッホの名作を台無しにすることなく、なじみます。
ゴッホの絵画を自宅で毎日眺められるなんて素敵ですよね。しかも1ロール(10m)あたりの価格は1万6千円です。これでトイレなど小さいスペースの壁の一面は十分にまかなえて、がらりと印象を変えることができます。部屋は毎日、ずっと使うものですからね」
【GALARIE G 56153×グレーウォルナット】
最後に選んだのは、イギリスのブランド「GALARIE」から、クラシックな雰囲気の本棚柄の壁紙。トロンプルイユ(だまし絵)の本棚が、部屋に奥行きを生み出してくれます。
この壁紙には、risoraのグレーウォルナットの木目がぴったりです。
「グレーウォルナットなら、まるで本棚の一部のように溶け込みます。ちょうど壁紙に描かれている棚の色と合わせられますね。risoraの木目調のパネルはいくつかバリエーションがあるので、エアコンの設置場所によっては、もう少し明るい色合いのパネルカラーも合いそうです」
壁とエアコンのトータルコーディネートが可能になる、セルフリノベーション&risoraという選択。自分の好みに合わせて、ぜひ皆さんも挑戦してみてはいかがでしょうか。
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坂田夏水(さかた なつみ)
空間デザイナー。「夏水組」として中古マンションのリノベーションやデザイン設計などを手がける。土地から建物まで既存の資産を有効活用し、よりよい空間づくり、まちづくりを目指している。インテリアマテリアルショップ「Decor
Interior
Tokyo」もプロデュースし、DIY体験ができるワークショップも毎月開催している。『セルフリノベーションの教科書』シリーズなど、リノベーションやDIYのアイデアとテクニックに関する著作も多数。
http://www.natsumikumi.com/
Decor Interior Tokyo
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-26-10
https://decor-tokyo.com/