床暖房 モニターレポート
真冬にはマイナス15℃になることもあるという北海道の船木様邸。
昨年の灯油代の高騰を期に、永年使ってこられた灯油炊きストーブによる温水床暖房の熱源転換を決意されました。
「北海道でのヒートポンプの実力を、自ら体験・検証したい」ご自身も建築設備のプロである船木様の思いです。
灯油からの熱源転換でヒートポンプの実力を試したい。
こだわり
船木様邸で使用中の灯油炊きFF式ストーブ
ストーブの操作部。左側に床暖房のスイッチが。
今では、扇風機で空気を循環させたり、灯油ファンヒーターやホットカーペットなどの補助暖房を併用して何とか節約を意識。
しかし、「外から帰ってくると、屋外とほとんど気温が変わらないこともある」(ご主人)という厳寒期には、なかなか暖まりきらず、仕方なくフリースなどのアウターを着て過ごすことも。「外で着る上着を部屋の中で着て過ごすのには抵抗があります」とご主人は嘆きます。
また、さまざまな努力で電気代は1万円弱に落ち着いたものの、燃料高の影響を考えると補助暖房の灯油代には不安が残ります。
鼻炎持ちのご主人のためにも、本当はファンヒーターなど風を巻き上げる暖房は使いたくありません。
「14年前にこの家を全面リフォームしたときに設置して以来、ずっと使っています」とご主人。
約16畳のLDKのリビング/ダイニング/キッチンの各スペースには、暖房パネルがそれぞれ4枚/2枚/1枚、計7枚敷設されています。
パネルの大きさは1枚当たり約850×1700mm。
これは畳1畳を少し小さくしたサイズです。
現在の床暖房の効き具合についてお聞きすると、「ストーブだけの暖房では、どうしても温度ムラが生じて、床に近いところや窓際では肌寒さを感じてしまいます。
これをカバーするためにストーブ連動式の温水床暖房を取り入れたのですが、実際には思ったように暖まってくれないんですよ」と、ご主人からは意外な言葉が飛び出しました。
「実は、ストーブを適温に設定すると、床暖房の温水が十分に温まらないんです。で、温水を十分暖めようとすると、ストーブで過剰暖房になってしまい、暑すぎるうえに灯油代がその分多くかかってしまいます。結局床暖房は使っていますが、十分な暖かさを得られないまま、14年経ってしまいました」(ご主人)
リビングのテレビの前には、電源を入れないコタツも置かれています。
「床暖房の熱を少しでもコタツ布団のなかに貯めようと思って」と苦笑されるご主人。
キッチンで家事をされることの多い奥様も、床暖房の効きが足りないことにはお悩みのようです。
「ここ(キッチン)はストーブから最も離れているので、冬場は足元の冷えがつらい日が多いです。キッチンにいる限り、床暖房のありがたみを感じたことはないですね」(奥様)
灯油炊きFF式ストーブと、連動する温水床暖房の暖房能力のアンバランス。
ご夫妻の悩みは毎年くり返されてきたのでした。
永年にわたり冬場の暖房の悩みを抱えてこられた船木様ご夫妻に、これまでの暖房方法を見直す大きなきっかけが訪れたのは、昨年の冬に起きた灯油代の大幅な高騰でした。
「2008年の1月に1リットルの値段が90円を超えたんです。この時期はひと月に300リットルは灯油を使うので、光熱費は灯油だけで27,000円。僕の小遣いがなくなってしまうかと思うほどの衝撃でした(笑)」(ご主人)
1年経った今では1リットル60円代にまで下落しているようですが、この高騰でエネルギーコストが変動することの「怖さ」をしみじみ実感されたとか。
ご自身も建築設備のプロとして、道内のビルや住宅の設計を手がけられているご主人ですが、この出来事を契機として熱源としての電気とヒートポンプの組み合わせにがぜん注目されるようになりました。
「もともと北海道では冬の暖房といえば灯油が主役。1リットル30円くらいの時代がずっと続いていたんです。その頃は電気の暖房はとても高くつく印象がありました。しかし時代は変わりましたね。今は逆。電気料金は変動が少なくて、料金プランも多彩で選択の幅が広がっています」(ご主人)
さらにご主人はヒートポンプ式の暖房についても、ご自身でダイキンのエアコンを使ったことで、その良さをあらためて認識されたようです。
「ここ数年、北海道も夏場の暑さが厳しくなってきて、自宅にもダイキンの壁掛形エアコン(UXシリーズ)を設置したんです。
ずっと冷房用として使ってきたんですが、去年の11月ごろの冬の始まりの時期に、暖房にも使ってみました。
もちろん仕事柄、オフィスビルの空調設備で使われているヒートポンプのメリットは知っていましたが、ひとりの生活者として自身で使ってみて、寒冷地でも十分に満足できる暖房性能と、省エネ性を兼ね備えていることがわかりました。
時代に合った熱源だなあと、強く実感しました。
ヒートポンプは、電気のエネルギーを効率よく使って、大気中の熱を汲み上げるしくみですから、燃料を燃やして熱を発生させる他の熱源に比べて環境への負荷が断然少ない。
これは灯油に代わって、次の時代の北海道の冬の主役になるんじゃないかと。
そこで、わが家の床暖房もあらためてヒートポンプ式にチャレンジしてみようと考えたのが、応募のきっかけです」(ご主人)
モニター当選よりほどなくして、船木様邸の現地調査が行われました。
今回新たに設置されるダイキンの床暖房製品は、「ホッとエコフロア」の8~22畳対応タイプ。
外気温マイナス20℃まで運転できる寒冷地対応機種です。
今回の工事は、現在ご使用の床暖房パネルはそのまま活かしながら、灯油式床暖房をヒートポンプ(電気)式床暖房に転換する工事となります。工事を担当されるのは、地元の設備工事を幅広く請け負っていらっしゃる札樽整熱工業の岡﨑氏。
打ち合わせで出てきた3つの課題は以下のようなものでした。
課題1:既存の温水パネルと新しい床暖房の室外ユニットがうまくつながるか?
まず岡﨑氏は、今使われているパネルのサイズを船木様にたずね、設置面積を実際に計測。LDK全体の面積に対するパネルの敷き詰め率が、暖房性能を発揮するために十分な割合であることが確認できました。
次に、現在床暖房パネルから灯油炊きストーブに接続されている温水配管の確認。今回の工事では、この配管をストーブからはずして、新たに設置する「ホッとエコフロア」の室外ユニットにつなぎかえる必要があります。
「異なるメーカー同士の設備がちゃんとつながるの?」とやや不安げな奥様に対し、配管状態と部材の資料をチェックした岡﨑氏は、「大丈夫。問題なく接続できます」と笑顔で回答されました。
床暖房パネルの位置を計測中の岡﨑氏(右)
床暖房の配管にも使用可能であることが確認された通気穴(左)。
右はストーブの排気管
課題2:コンクリートの建物から配管を外に出す方法とは?
船木様のご自宅は、お父様の代に新築された堅牢なRC(鉄筋コンクリート)構造。いざ配管を室外のユニットにつなごうとすると、大がかりな穴あけ工事が必要になる可能性がありました。
「正直、それなりの出費を覚悟していました」とおっしゃる船木様。
しかし、現在温水配管とストーブをつないでいる場所のすぐ後ろの壁面に、丸い通気穴が設けられています。岡﨑氏による確認の結果、「ホッとエコフロア」の室外ユニットとの接続に必要な配管を通すには、十分な口径であることがわかりました。
またこの通気穴は床から高さ約1メートル30センチのところにありますが、「高低差も温水の循環には支障ありません。配管が露出する部分はカバーで隠せますからご安心ください」との岡﨑氏の言葉に、船木様もホッとされた様子でした。
課題3:室外ユニットの積雪・防寒対策は?
新たに設置する「ホッとエコフロア」の室外ユニットの置き場所として、岡﨑氏が最適と判断されたのは、現在設置されているダイキンエアコンUXシリーズの室外機が置かれている、K南面の軒下。日当たりもよく、雪や風をある程度防げて配管の距離も適当と、船木様とも意見が一致しました。
「エアコンの室外機を置いているところに架台を設置して、上に床暖房の室外ユニットを置きましょう。二段積みにすることで、設置スペースも効率化できます」
と岡﨑氏が提案されます。
さらに室外ユニット周辺に防雪フードを設け、屋外に露出した配管には保温付架橋ポリ管を採用するなど、万全の積雪・防寒対策を施すことに。寒冷地ならではの工夫といえそうです。
「外気温がマイナス10℃を下回る地域では、温水用として水道水ではなく、専用の不凍液を使います。今の床暖房にも不凍液が使われてますが、工事の最初にそれをすべて抜いて配管の洗浄を行います。そのうえで、新たに専用の不凍液を注入します」と、寒冷地での工事ノウハウを語る岡﨑氏。
こうして課題は解決され、工事へと進むことになりました。
室外ユニットの設置場所と配管の距離を確認中の船木様と岡﨑氏
「共働きで平日の昼間は不在にするため、 冷えきった部屋を帰ってきてから暖めるのが大変。ヒートポンプ式の床暖房なら早めにタイマーをセットしておけば、帰っても寒い思いをしないですみそうですね。灯油では危険なので、こんな使い方はできないでしょう」と、熱源転換後の使いこなしをイメージされる船木様ご夫妻。
「真冬の厳しい寒さの時期には、灯油炊きストーブを床暖房と一緒に使うこともあるかと思いますが、床暖房の暖房効果が上がれば、灯油併用でも光熱費は下げられるはず。
これからは春に向かうので、エアコンと床暖房の併用もぜひ試してみたいですね」(ご主人)
また、船木様ご夫妻は、今回の床暖房モニターの当選が決定したあとに、ご自宅の給湯設備もヒートポンプを使ったダイキンエコキュートにリフォームされることを決断されました。
「これまで給湯は灯油を使ってきたので、エコキュートの導入でヒートポンプ(電気)に切り替えることになります。北海道には、電気料金にヒートポンプ用の『融雪電力』というメニューがあるんですよ。シミュレーションしてみて利用価値があるとわかったら、ぜひ申請したい」(ご主人)と意欲的です。
これからは北海道もヒートポンプの時代になると予感をお持ちの船木様。
「灯油価格の高騰以来、北海道でも熱源見直しの意識が高まりつつあります。
自分自身がヒートポンプの実力を体験・検証することで、今後の設計の仕事にも生かしていきたいです」と熱い思いを語っていただきました。
床暖房専用 ホッとエコフロアはヒートポンプ式の温水床暖房専用システムです。
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