ケース1 / 大阪の3階建て住宅
建築家:水谷嘉信氏(水谷嘉信建築設計事務所)
「家を初めて見た時、“ひらめき”があるのです。」
「“ひらめき”の元となっている『心ときめくもの』だけを残して大胆に整理し、改造していく。それが新築にはない、リノベーションならではの醍醐味ですね」
そう語るのは、狭小住宅から集合住宅、店舗まで、豊富なリノベーション設計の実績をお持ちの建築家、水谷嘉信氏。
水谷氏にとって、リノベーション設計とは「医療に似ている」ものなのだとか。
なぜなら「診断して悪い箇所を見つけて、治す」から。
「たとえば長年の居住で、家にはモノが増え、あふれてきます。そんな場合、よく施主さんからは、モノが多くなったので部屋を増やしたい、というご要望があるのです。
しかしモノのために増やす部屋は、部屋ではなく物置き。部屋としては死んでいる…そう私は思っています。
部屋はモノではなく人のために存在して初めて、生きるもの。
私は家や部屋を、生き返らせたいのです」
では、“生き物”としての家にとって、もっとも重要なものは何なのでしょうか?
水谷氏は明快に「風と光を取り込むこと」と、即答されました。
「物置のような死んだ部屋は、まず空気がよどんでいます。だから暮らしぶりなどをお聞きし、不要と思われるものは整理します。
最初に見て『この部屋はいらないな』と感じたら、大胆に整理します。そうして、風と光の通り道を作っていくのです」
水谷氏の設計に共通するのは、風と光を家の隅々まで届かせるためのアイデアがあふれている点。そのひとつが「中庭」の存在です。
狭小住宅でも、中庭を作る工夫がなされています。
「見るだけの中庭を作る方もいますが、私は、中庭は“外にある部屋”だと思うんです。私は風が通るように、全面開放でき、内と外がつながり一体になる、そういう中庭を作るようにしています。
だから風や光を遮るものがあってはならない。住宅のリノベーションとは、つまりが空気のリノベーションでもあるんです」
敷地中央に大胆に中庭を配置。住む方は、そこを通って家に入っていきます。中庭には大きな水盤があり、その水面に反射した光がリビング天井に映ります。
南側から見た外観。2つの棟に挟まれた部分が中庭。夜などは、この開口部は閉めることができます。
リビングから中庭を望む。中庭の向こうに水盤が見えます。
水盤の水面に反射した揺らぐ光が、リビングの天井に映っています。
家の正面を全面、可動式ルーバーにし、日中は開放し風や光が入り込むように。夜間は閉めることでプライバシーやセキュリティを確保します。
大きなルーバーを配した、玄関口。夜になるとルーバーは閉じることができます。
2階テラスより、内部の部屋を望む。テラスの床はグレーチングになっており、光が1階にまで降り注ぐようになっています。
2階より、ルーバー越しに表を見た様子。
風と光の流れを重要視される水谷氏にとって、エアコンや空調はどのような役割を持つものなのでしょうか。
「中庭を中心に、外と内が一体化する家では、風が通ることで部屋を心地よい空間にします。しかし外と内を一体化するといっても夏は暑いし冬は寒い。窓を開け放っておくのも辛い季節ですね。
そんな時、自然の風の流れに代わって人工の風の流れを作る。
それがエアコンや空調の役割だと思います」
水谷氏が、特に設計で積極的に取り入れられているのが、ハウジングエアコン。そのメリットを、こう説明されます。
「壁や天井に埋め込むので、機器が目立たない。内と外との空気感がひとつになるのを損なうことなく、空気のリノベができる」
水谷氏はさらに、もうひとつのメリットも挙げられました。
「天井埋込形や床置形、壁埋込形があり、暮らし方やお部屋の状況に合わせて選べるのもいいですね」
では1回目の最後として、ダイキンのハウジングエアコンを大々的に取り入れた、水谷氏の新しいリノベーション設計について、語っていただきましょう。
今回レポートする、水谷氏の最新リノベーション住宅は、大阪の都心部にある、狭小な3階建て徳山様邸。通常の建築家や工務店なら、最初から「中庭」など放棄してしまいそうですが…
「パッとみた時、不要なものが多いと感じました。風通しや日当たりが良くないとお聞きしたのですが、不要なものを整理すれば、中庭を通して風や光が入る家になると確信しました」
中庭は、住居2階に設置。3階部を吹き抜けとすることで、風と光を取り込むようにしています。また中庭中央に天窓を作ることで、1階まで光が明るく届きます。
「徳山さんに『中庭を作りましょう』と言ったら、『えっ!』とビックリなさっていましたが、やろうと思えば、どこでも風や光の通り道は作れます」
この新しいリノベーション設計の中で、ハウジングエアコンの役割をお聞きすると…
「階や部屋それぞれの役割や、住む方の暮らし方を考え、それぞれにあったタイプのエアコンを選びました」
では、次回は具体的に、今回のリノベーションをどのようにすすめていったかご紹介しましょう。
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