世界最大の家具見本市「ミラノサローネ」を訪れ、世界的トレンドを肌で感じてきたプロフェッショナルお2人によるスペシャル対談。インタビュー【前編】によると、「インテリアは、世界的に“自分好み”にアレンジしやすくなっている」ということ、「元気の出るような明るいカラーがトレンド」だとか。今回の【後編】では、そうしたトレンドを、私たちの住空間に取り入れるための具体的なヒントについて語ります。プロの目から見た、「risora(リソラ)」の活用方法についても、参考になるお話が満載です。
「インテリアを変えるなら、垂直方向から」が効果大
—【前編】では、最新のインテリアトレンドとして“自分好みの空間をつくりやすくなっている”という傾向を教えていただきました。今回は【後編】として、実際に空間づくりを始めていくためのポイントをお伺いしたいと思います。具体的に、どんなところから手をつけ始めるとよいのでしょうか。
網村:
家具を買い替えたり、床に何かを敷いたりするといった変え方よりは、「垂直方向のもの」を変えると、効果が大きいと思います。壁、ドア、窓など、垂直方向のものは家にいるときには絶えず目にしている部分ですし、たとえ忙しくても、帰ってくれば絶対に目に入ります。刺激値度数が一番高いエレメントなので、そこを変えるのがやりやすいのではないでしょうか。
—垂直方向というと、壁紙やカーテンを変えるようなイメージでしょうか。
網村:
以前、日本壁装協会のある企画で、2名のインフルエンサーの方に、ご自宅の壁紙の張り替えにチャレンジしていただいたことがあるんです。好みをヒアリングしながら、さまざまな壁紙のサンプルを見て決めていきました。
お一人の方は2種類の柄物の壁紙を張り分けていましたが、違う家になったのかと思うくらい、印象が変わりました。思いが現実になり、がらりと変わると、本当に喜んで頂けるんですね。
そうやって壁が変わると、それに合わせて次はあれを変えてみようかな、小物が欲しいな、と、次々にアイデアが湧いて、自分にとっての理想の空間をつくっていくためのきっかけになります。
そこまで大がかりなものでなくても、絵を飾る、家具に布などを掛けてみる、クッションを好きな柄のものにしてみるなど、一部分を変えるだけでも効果があると思います。インテリアは本来、一度に変えるものではなく、少しずつ完成していくものですから。
壁を白いキャンバスのままにしておくよりは、少しずつ好きなものを加えていって、暮らしや時間を楽しんでほしいと思います。
—「自分好みにできるカスタマイズ性の高さ」というトレンドや「垂直方向のインテリアを変える」というヒントをいただきましたが、「risora」は、まさにそのあたりにあるインテリアといえますね。
関:
壁掛けのエアコンって、部屋の中でも“いい位置”を占めているんです。なのに、今まではインテリアとしてではなく、必要な設備や家電として見られていて、「白くて大きくて、どうせ汚れてくる箱」だと、僕も思っていたくらい(笑)。諦めていた家電No.1だったかもしれません。
そこが、お客様も困っていらっしゃるポイントではないかと思ったから、サイズも小さく、運転していてもしていなくてもインテリアの一部としてとらえられるような商品を、と考えて「risora」を開発したんです。
網村:
それまではどうしようもなく、選べなかった部分ですから、嬉しくなっている人はたくさんいるでしょう。今までにないソリューションですから、新鮮ですよね。
関:
もともと「risora」は、単体で成り立つのではなく、お客様の空間に入ってはじめてインテリアとして完成する、「余白をもたせたデザイン」というのがコンセプトでした。発売から1年が経ち、購入してくださったお客様の使い方を拝見すると、空間になじむように使っていただく方、「risora」自体に惚れ込んで目立つように設置していただく方など、好みも使い方も十人十色だということがわかってきました。
そこで、さらにたくさんの色を選べるように『risora custom style』として豊富なカラーや木目や和紙、レザー調などの“質感”をもった「risora」を、今回新しく展開することになったんです。
網村:
いままでのエアコンは、白いプラスチックの大きな箱が壁にくっついているもの、というだけでしたが、「触ってみたい」と思えるような質感をもった、五感に訴える接触ポイントがあるのはすごいことだと思います。
塗装や仕上げに関しても、ただベタっと塗っているではなくきちんと考えられ、手間をかけられているものはやはり違って、表情としてじわりとにじみ出ていて、「触りたい」と、自然と手が誘導されてしまいますね。
関:
「risora」は、塗装で表現したマットな質感や、艶っぽい質感のインモールド加工、テクスチャーを感じる質感など、一つ一つとてもこだわってデザインしています。時間もコストもかかりますが、そのように丁寧につくったもの、手間をかけたものはちゃんと伝わるんだなと思って、すごく嬉しいです。
網村:
もののつくりや質感だけでなく、心地よい風、体に直にあたらない優しい風を作り出すということも盛り込まれているのですから、「空間になじませる・存在を隠す」という以外の方向性、積極的にインテリア要素として使いたいという方も出てくるのは自然なことのように思います。
関:
ミラノサローネの話とも関連しますが、カラーや質感のバリエーションを豊富に出すことで、「risora」を「自分の空間にも使えるかもしれない」、「取り入れたい」と思ってもらえる存在になれたらいいなと思っています。一人一人異なる好みに合わせて、気軽に体験できたり、試したりできるところがキーワードになっていて、着せ替えできるパネルという発想に至っています。
あくまでも、お使いになる方の空間と暮らしが主役で、それをサポートできるようになりたいですね。
インテリアにおける「risora」の活用術
—エアコンを設備・家電ではなく、インテリアとしてとらえると、選び方も変わりそうですね。
関:
今までは、エアコンを買う主な理由は「古くなったから」「壊れたから」というものでした。選ぶときも、畳数や欲しい機能を中心に選んでいたと思うんです。でも、先ほども触れたように、エアコンって、部屋の中でどこからでも目に入る、特等席にあるもの。必需品でもあり、どうしたって“存在してしまう”存在なのですから、どうせなら、インテリアのように楽しんでいただきたい。
家具を買い換えたり、引越しや模様替えをしたりと、理想の空間づくりをしようとするときに、「risora」を選ぶというように、まったく方向性の違う選び方を、やっとご提供できるのではないかと感じています。または、「risora」があるから、こんな空間をつくれるかもしれないって、きっかけになってくれたら本当に嬉しいですね。
網村:
「risora」は、生活を変えよう、暮らしを変えようとするきっかけに、きっとなると思いますよ。みんなが今まで気にしていなかったり、なんなら邪魔だなと思ってたりする人もいるかもしれないものが、まったく違うものとして出てきたわけですから。逆に「risora」に合わせて、壁を変えようかと思う可能性もありますし、先に壁を変えた人は、よし次はエアコンを変えてみようって思うでしょう。エアコンをきっかけに、リフォームなど、いろんな話に広がるかもしれないですよね。
—「risora」をインテリアのいち要素として活用するためのヒントがあれば、教えていただけますか。
網村:
自分の好みというものは、見ているうちにわかってくるっていうところがあると思うんです。雑誌やウェブなどでたくさん事例を見て、自分はこんなところに惹かれるんだ、好きなんだって、わかってくると思っています。ファッションだとより進んでいて、ハウスマヌカンのような方がいて、漠然としたイメージを伝えれば服を提案してくれたりしますけれど、インテリアはまだそこまではいってないですね。
関:
少なくとも、「エアコンひとつでインテリアが変わる」とは思っていませんし、空間全体で変えることが必要でしょうから、まずはたくさんコーディネート事例を見ることでしょうか。これまでのエアコンは白一色だったので、コーディネートしようと思ってもみなかったと思うんです。だから、意外とみんなが思い描く「こんなインテリアにしたい」とうい理想の中に、エアコンは入っていないのかもしれません。
木目調の優しい家具で統一しているインテリアに、木目調の質感「risora」を合わせて馴染ませたり、逆に際立たせるように置いてみたり、アースカラーにも馴染むオレンジやイエローに挑戦してみたり、自由に使っていただきたいですね。
網村:
「risora」は建具や床材と合わせやすいナチュラル系、観葉植物となじむグリーン系、モノトーン系、ビビッドな原色系など、豊富なバリエーションで全て違うテイストを持っていますよね。
オレンジやイエローはミラノサローネでもたくさん見ましたが、元気になれる色であり、ナチュラルカラーの延長線上のアクセントカラーでもあることから、取り入れやすいと思います。若い女性にはやさしいエレガントさを好む層が多いですから、その方たちにはパールがかったものや彩度の低い色が選ばれるでしょう。ラベンダーやライラックなども紫系の色もありますが、とくに日本人には、昨今の皇室の行事でもみられたように、ノーブルで高貴な色だととらえられていて、ご年配の方にも好まれると思います。
—これからの「risora」はどんな存在になっていくでしょうか。
関:
今までのエアコンの役割は、「マイナスをゼロにする」ところにありました。暑いから冷やそう、寒いから温めようというベクトルですね。ただ、「risora」をはじめとして、これからは、マイナスをゼロにするだけじゃなくて、さらにプラスの要素、幸福感や体験したことのない感動など、そんな空気を作っていきたいと考えています。
エアコンを設備や家電だと考えると、課題を解決するだけでよかったかもしれませんが、新しい暮らし方や、理想の空間を提案したいと思ったら、やはり新しいユーザー体験を提供していかなければなりません。これが、メーカーとしての社会的な役割であり、ミッションだと僕は考えています。
<プロフィール>
網村眞弓 あみむら・まゆみ
Color Design Firm 代表、インテリアデザイナー、日本IBM研究所、グレイインターナショナル・メディアプラン、スワロフスキージャパン・PR・CRマネージャー歴任。日本初の小規模多機能高齢者住宅を始め医療・高齢者の施設計画。英国、ケンブリッジ・インスティチュート修了。スイス、エコール・デュ・ボアにてインテリア様式および建築模型制作コース修学。トレンドを経年視察し、市場分析およびアジアでの導入やグローバル戦略セミナー、コンサルティング等を行っている。
関 康一郎 せき・こういちろう
2006年ダイキン工業株式会社入社。「うるさら7」や「risora」をはじめ、ユーザーや業界を驚かせるプロダクトデザインを次々と生み出す。2015年からは「見えない空気を愛されるものにする」というダイキンデザインフィロソフィーのもと、「空気のデザイン」に取り組み、空気で解決できる空間の感動創造、コア技術の見える化による協創促進、ユーザーとのコミュニケーションデザインに挑戦している。